商売とデッキデザインの狭間
2003年10月30日【マジック】
> IRCで話題にしたことなのだが、どうして構築済みはばら売り(というかバラ仕入れ)できないのだろうか?
> あと、初心者から上級者までの購買意欲を誘う内容にできないものなのか?
>話の始めは、WoC社が出す構築済みデッキはなぜ余り強く無いのか、なぜ新しいシステムを前面に押し出していないのかだった。
否定的な文章になってしまうかもしれないがまず先に謝っておく。ごめん。
さて、構築済みの魅力についてははりのさんや某店の東京行日記でも語られていることだが、「売れる」構築済みの条件というものはいくつか存在する。
構築済みを作るに当たって、まず何を気をつければ良いのだろうか。
・各レアリティの枚数制限
デッキデザインにおける足かせのひとつがこれ。レアは2枚、アンコモンは13(40枚なら7枚)枚、残りをコモンと土地(22〜26/60、15〜20/40)で配分する。アンコモンの土地はアンコモン枚数と土地枚数として考えるが、コモンの土地は単に土地枚数とだけ数えられている様子である。
・各カードの枚数制限
レアは1枚、アンコモンは1〜3枚、コモンは1〜4枚で構成するという条件も付加される。
しかし、ここで気を付けなければいけないのは、「強いカード」を最大制限枚数つっこめばいいというものではないということである。
・デッキのテーマ
デッキデザインの足かせ・・・というよりは根本だ。前ふたつの条件をふまえて、「どのカード、どのメカニズムを中心にデッキを構成するか」を問題にしなければならない。
また、すべてのデッキを「除去とクリーチャー」にしてもいけない。4種類あるデッキのそれぞれについて、アクティブかパッシブかのどちらかの性格を持たせなければならないのだ。
しかしながら、使えるカードプールが狭いと必然的に色も偏ってしまいがちだが、5色とアーティファクト、あるいは多色もすべてデッキのいずれかに存在し、デッキのテーマやメカニズム、シナジィに関係していなければならない。・・・いや、していたほうが望ましい。
・カードプール
カードプールの広さ狭さはエキスパンションが進むにつれて「狭く」なる。なぜなら、3つめのエキスパンションの構築済みは前二つのセットからのカードも含めなければならず、そのうえで上記の条件を満たさなければならないのだ。
・商品としての価値
一番あいまいで時期によっても左右される条件がこれ。
まず、デッキ単体としての完成度。これはデッキが「きちんと回り、ほかの3つのデッキと対戦したときに長所短所がある」こと。
これは、構築済みを欲しいと思わせるだけのカードの魅力・・・つまり能力が高いカードが入っていたり枚数が潤沢だったりするなかで出てくる「これを買えばOK」という存在価値である。
そのうえで、各テーマデッキ同志の対戦での相性・・・有利、不利、五分五分をきちんと「どのデッキも公平に」成り立っていたほうが望ましい。
また、完璧に完成されているデッキではダメだ。「あれがあれば勝てる」「このカードはいらない」等の改善点がなく、デッキの捜索意欲をそぐような構築済みであってはいけないということと、そしてパック及び同じ構築済みを買ってパワーアップ、あるいは改良という手法をとれないデッキでは、ライトユーザーがリピーターになりえない。
カードの枚数が制限されしかも買う価値があり、そのうえ「未完成」のデッキでなければならない。
そんな矛盾だらけの条件でデッキを組み上げられる人間は神か何かだと思う。
・・・遊戯玉やGWの構築済みの構成や位置付けがどうなっているかは知らないのでマジックの構築済みの話だけをさせてもらう(比較しようにもそのゲームをわかっていないのだから突っ込みようがない)
構築済みが売れる売れないの区別がはっきりしてしまうのは、とりもなおさずパワーカードの存在の有無にある。
あるいはデッキの完成度の高さでもある(ミラディンの青黒「策略」)。
構築済みデッキだけを売る考えなら、当然パワーカードを1枚入れておくだけで事足りる。それがテーマに沿っていようがいまいが、ヘビーユーザ(トーナメントプレイヤー)はこぞって買いあさるだろう。
その結果どうなるのか。入荷した瞬間にヘビーユーザにおいしいところだけをむさぼり尽くされ、事情を知らないライトユーザには「おこぼれ」程度の美味しくない商品しか残らない。
これは以前からもショップに見うけられる現象で、特定の構築済みだけ売れて人気のないものは在庫→売れないので処分価格 という末路が大半だ。
ライトユーザでもあるものを買う人間もいれば、「残り物に福はない」ということを良く知っている人間ならば当然のように手を出さない。
美味しい美味しくないがはっきりしていれば商品の売れ行きにも当然差が出る。これはごく当然のことだ。
ではすべて「美味しくしたら」どうなるのか。結局、その美味しさを独占するのは入荷を今か今かと待ちうける貪欲なヘビーユーザだけであり、構築済みは「レア抜き」されたうえでごみ箱へ行くことも容易に想像できはしないか。
それは果たして、正しい構築済みのあり方なのだろうか?
ライトユーザに対して、新しいメカニズムの紹介をしたり、カードの組み合わせによるシナジィの発見を楽しんでもらうことも構築済みの役割のはずだ。
構築済み単体を売るために「美味しいカード」を入れれば、この目的が果たせなくなってしまうのだ。
売れないよりは売れたほうがいいのは当たり前だが、「美味しいカード」を入れる弊害はまだある。
構築済みを買えば必要なカードが揃ってしまうのであれば、レア抜きをすることでトレードの相場である資産を肥やすことができ、パックを買う意味も薄れてしまう。
価値あるものが選べて買えてしまうのは、「トレーディングカードゲーム」の根本を脅かすものでもあるわけだ。
だが、シングルカード商売が成り立つのは、そうした「選んで買う」ことができる点をビジネスにしているわけで、一部とは言えシングルの値段を狂わせてしまうかもしれない。
消費者にとっては、必要なカードが安くなるのはそれはそれで嬉しいことだろうが、それによりシングル商売が割りに合わなくなってしまえば、店側がパックの開け控え、つまり在庫切れを起こすこともじゅうぶん予測の範囲内だ。
構築済みデッキが「完成してはいけない」「美味しくあっては困る」という点で矛盾をはらんだものになっている点で、既にビジネスの中に組み込めるものではないのかもしれない。
だが、魅力のないテーマデッキの作り方ではやはりライトユーザの購入意欲も殺がれるのは確かなわけで。
エキスパンションセットのテーマデッキはまだ「これだけの条件」で済んではいるが、基本セットの構築済み---入門セットに使うためのデッキデザインというものはさらに難しい条件が重なる。
・初めて買う人に段階的に、そしてわかりやすくマジックのルール、カード、ゲームの進行を紹介する
これが満たせるデッキデザインというものの完成形があったら見てみたいものだ。
最大文字数がきてしまった。長文はひとまずここまでにしておこう。(2958/3000)
> IRCで話題にしたことなのだが、どうして構築済みはばら売り(というかバラ仕入れ)できないのだろうか?
> あと、初心者から上級者までの購買意欲を誘う内容にできないものなのか?
>話の始めは、WoC社が出す構築済みデッキはなぜ余り強く無いのか、なぜ新しいシステムを前面に押し出していないのかだった。
否定的な文章になってしまうかもしれないがまず先に謝っておく。ごめん。
さて、構築済みの魅力についてははりのさんや某店の東京行日記でも語られていることだが、「売れる」構築済みの条件というものはいくつか存在する。
構築済みを作るに当たって、まず何を気をつければ良いのだろうか。
・各レアリティの枚数制限
デッキデザインにおける足かせのひとつがこれ。レアは2枚、アンコモンは13(40枚なら7枚)枚、残りをコモンと土地(22〜26/60、15〜20/40)で配分する。アンコモンの土地はアンコモン枚数と土地枚数として考えるが、コモンの土地は単に土地枚数とだけ数えられている様子である。
・各カードの枚数制限
レアは1枚、アンコモンは1〜3枚、コモンは1〜4枚で構成するという条件も付加される。
しかし、ここで気を付けなければいけないのは、「強いカード」を最大制限枚数つっこめばいいというものではないということである。
・デッキのテーマ
デッキデザインの足かせ・・・というよりは根本だ。前ふたつの条件をふまえて、「どのカード、どのメカニズムを中心にデッキを構成するか」を問題にしなければならない。
また、すべてのデッキを「除去とクリーチャー」にしてもいけない。4種類あるデッキのそれぞれについて、アクティブかパッシブかのどちらかの性格を持たせなければならないのだ。
しかしながら、使えるカードプールが狭いと必然的に色も偏ってしまいがちだが、5色とアーティファクト、あるいは多色もすべてデッキのいずれかに存在し、デッキのテーマやメカニズム、シナジィに関係していなければならない。・・・いや、していたほうが望ましい。
・カードプール
カードプールの広さ狭さはエキスパンションが進むにつれて「狭く」なる。なぜなら、3つめのエキスパンションの構築済みは前二つのセットからのカードも含めなければならず、そのうえで上記の条件を満たさなければならないのだ。
・商品としての価値
一番あいまいで時期によっても左右される条件がこれ。
まず、デッキ単体としての完成度。これはデッキが「きちんと回り、ほかの3つのデッキと対戦したときに長所短所がある」こと。
これは、構築済みを欲しいと思わせるだけのカードの魅力・・・つまり能力が高いカードが入っていたり枚数が潤沢だったりするなかで出てくる「これを買えばOK」という存在価値である。
そのうえで、各テーマデッキ同志の対戦での相性・・・有利、不利、五分五分をきちんと「どのデッキも公平に」成り立っていたほうが望ましい。
また、完璧に完成されているデッキではダメだ。「あれがあれば勝てる」「このカードはいらない」等の改善点がなく、デッキの捜索意欲をそぐような構築済みであってはいけないということと、そしてパック及び同じ構築済みを買ってパワーアップ、あるいは改良という手法をとれないデッキでは、ライトユーザーがリピーターになりえない。
カードの枚数が制限されしかも買う価値があり、そのうえ「未完成」のデッキでなければならない。
そんな矛盾だらけの条件でデッキを組み上げられる人間は神か何かだと思う。
・・・遊戯玉やGWの構築済みの構成や位置付けがどうなっているかは知らないのでマジックの構築済みの話だけをさせてもらう(比較しようにもそのゲームをわかっていないのだから突っ込みようがない)
構築済みが売れる売れないの区別がはっきりしてしまうのは、とりもなおさずパワーカードの存在の有無にある。
あるいはデッキの完成度の高さでもある(ミラディンの青黒「策略」)。
構築済みデッキだけを売る考えなら、当然パワーカードを1枚入れておくだけで事足りる。それがテーマに沿っていようがいまいが、ヘビーユーザ(トーナメントプレイヤー)はこぞって買いあさるだろう。
その結果どうなるのか。入荷した瞬間にヘビーユーザにおいしいところだけをむさぼり尽くされ、事情を知らないライトユーザには「おこぼれ」程度の美味しくない商品しか残らない。
これは以前からもショップに見うけられる現象で、特定の構築済みだけ売れて人気のないものは在庫→売れないので処分価格 という末路が大半だ。
ライトユーザでもあるものを買う人間もいれば、「残り物に福はない」ということを良く知っている人間ならば当然のように手を出さない。
美味しい美味しくないがはっきりしていれば商品の売れ行きにも当然差が出る。これはごく当然のことだ。
ではすべて「美味しくしたら」どうなるのか。結局、その美味しさを独占するのは入荷を今か今かと待ちうける貪欲なヘビーユーザだけであり、構築済みは「レア抜き」されたうえでごみ箱へ行くことも容易に想像できはしないか。
それは果たして、正しい構築済みのあり方なのだろうか?
ライトユーザに対して、新しいメカニズムの紹介をしたり、カードの組み合わせによるシナジィの発見を楽しんでもらうことも構築済みの役割のはずだ。
構築済み単体を売るために「美味しいカード」を入れれば、この目的が果たせなくなってしまうのだ。
売れないよりは売れたほうがいいのは当たり前だが、「美味しいカード」を入れる弊害はまだある。
構築済みを買えば必要なカードが揃ってしまうのであれば、レア抜きをすることでトレードの相場である資産を肥やすことができ、パックを買う意味も薄れてしまう。
価値あるものが選べて買えてしまうのは、「トレーディングカードゲーム」の根本を脅かすものでもあるわけだ。
だが、シングルカード商売が成り立つのは、そうした「選んで買う」ことができる点をビジネスにしているわけで、一部とは言えシングルの値段を狂わせてしまうかもしれない。
消費者にとっては、必要なカードが安くなるのはそれはそれで嬉しいことだろうが、それによりシングル商売が割りに合わなくなってしまえば、店側がパックの開け控え、つまり在庫切れを起こすこともじゅうぶん予測の範囲内だ。
構築済みデッキが「完成してはいけない」「美味しくあっては困る」という点で矛盾をはらんだものになっている点で、既にビジネスの中に組み込めるものではないのかもしれない。
だが、魅力のないテーマデッキの作り方ではやはりライトユーザの購入意欲も殺がれるのは確かなわけで。
エキスパンションセットのテーマデッキはまだ「これだけの条件」で済んではいるが、基本セットの構築済み---入門セットに使うためのデッキデザインというものはさらに難しい条件が重なる。
・初めて買う人に段階的に、そしてわかりやすくマジックのルール、カード、ゲームの進行を紹介する
これが満たせるデッキデザインというものの完成形があったら見てみたいものだ。
最大文字数がきてしまった。長文はひとまずここまでにしておこう。(2958/3000)
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