ニッサはハイバが自分の剣を空中で振る音を聞いた。そいつらは森の地面にぶつかり、別々の方向に回転して割れた。ニッサはは跳ねるように動き、その間も両手で杖を握り締め、よく使う呪文をつぶやいた。いつものように、彼女の杖は魔力の波の線にそって燃えるような熱を持ち、その葉脈のような光は彼女の頭からねじれて放出されていた。彼女の持つバーラ・ゲドのジャングルとのマナの繋がりが確実に、強くなるのを感じ、葉脈は赤く光り始めた。次の瞬間、4人のジョラーガの戦士が散開して彼女の周りに立っていた。森の地面の鈍い明るさのなかちらちらと光り、ジャングルランのような香ばしい臭いがした。彼らの目は鋭く、背中から小弓をさっと取り出し、矢をつがえ、流れるような一挙動で放った。矢は彼らが見下ろす木々にかがんでいる2匹のものに飛んで行った。それらは灰色と黒色で、キチン質の幾何学模様の板で覆われていた。そのクリーチャーの腕は二股に分かれていて、足はてらてらと光る触手だった。頭はなく――肩のところにはこぶだけしかなかった。体のほうにはまぶたの無い青い眼で覆われていて、表情らしいものもなく矢をその細い腕で叩き落した。後方から、彼女はくすくす笑いとさえずるような声を聞いた。彼女が振り向くと、さらに4匹のクリーチャーが枝の上で静かに体を揺らしていた。ジョラーガたちはさらに矢を射つが、そのクリーチャーによってほとんどがはたき落とされてしまう。1本の矢が目標をとらえ、それの上部胴体に刺さった。そのクリーチャーは奇妙なうめき声をあげ、前のめりに倒れ、回転しながら地面に落ちていった。残っていたクリーチャーたちは驚くべきしなやかさで跳び、森の地面までの道を駆けて死んだそれに群がり、その触手を伸ばして触れた。
 死んだそれの上に立っている別のクリーチャーめがけ、ジョラーガたちはさらに矢を射た。残りの4匹はゆっくりと振り返った。その眼に、ニッサは一瞬息を止めた――それらの体を覆う、無表情な青い眼。そこには怒りも悲しみも、悪も善もなかった。彼女がゼーム獣を見るときのようなやりかたで自分を見ていることが癪に障った。獲物として見られてる。
 ジョラーガは3匹目のクリーチャーを撃ち、残った3匹の獣はその腕――細い触手で滑るように突進してきた。一匹がジョラーガを捕らえ、次のものがニッサを捕らえ、喰らおうと引きずった。呪文をつぶやき、ニッサは杖を振り上げて一番近くに居たクリーチャーの体に打ちつけた。そいつは後ずさり、固い肉のうちに緑に光るへこんだ部分をその青い眼が見た。

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