彼女が作ったツタの壁はまだひとかけらが残っていた。彼女が数えていた19匹目までのクリーチャーをそれが捕らえて、矢を射て倒したものだった。しかしその壁の後ろを見たとき、彼女の心臓は喉まで出かかった。彼女の部隊の数人の死体が、まだらに落ちかかる光のなかにばらばらに引き割かれていた。ニッサの指ほどのナール蝿がてらてら光る赤い肉の上をブンブンと飛び回っていた。何ともつかない欠片が彼女の周辺の枝に引っかかっていた。ハエのブンブン言う音が彼女の耳に急にうるさく聞こえた。彼女がきびすを返し去っていくのを、枝の別れ目に載っている引きちぎられたエルフの頭部が、動かぬ瞳で見送っていた。
 彼女は探していた人を森の地面で見つけた。彼の右腕はぺしゃんこになっていて、両足も同じく平らになっていた。それでも、彼はまだ息があった。左手にはまだ弓が握られていて、彼女がどうやってもその指をこじあけることができなかった。
 「ハイバ」彼女はその耳にささやきかけた。「あたしは貴方が死んだと思っていたの。ゆっくりと息をするのよ」彼女は首根っこの下とお尻の下に手を差し入れ、彼を持ち上げた。開けた場所へ悲鳴が上がった。
 その見知らぬ男は死んだクリーチャーのまわりを首を振りつつ歩き回っていた。ニッサがハイバを抱いて開けた場所に出てくると、彼はそちらを向き、彼女が地面に下ろすのを見つめていた。その振る舞いは彼女を不安にさせたが、できるかぎり彼を楽にさせようと懸命になった。あの見知らぬ男が唱えた呪文を見たことを忘れようと努め、彼女は手をお椀型にして口に当て、その男のほうを向いた。
 「あなた、水を持ってない?」彼女は叫んだ。何かを飲む素振りをして「水は?」
 その男は彼女と傷ついたエルフの隣まで歩いてきた。近くで見ると、彼女が思っていたより背は高かった。金のまだらの瞳は、その男の青白い顔に不思議な熱を与えていた。その男は興味無さげにハイバを一瞥した。その瞳は彼女に向けられた。
 「これはじきに死ぬ」その男はハイバを見ることもなく言った。その声は喉の奥底から響いてきた。「すでに死んでいる」
 彼女はその見知らぬ男が言ったのがハイバのことか自分自身のことかどちらなのかに絶対の自信を持てなかった。
 「あんた、誰なの?」彼女は尋ねた。
 彼は開けた場所に注意を払っていた。「私は、ソリンと呼ばれている」
 ソリンは振り返り、その金色の目でニッサをまたじっと見つめた。ハイバはうめいた。
 「そして貴様は、ジョラーガのエルフであると、私は考える」その男は言った。

コメント

JFK_
2010年3月3日17:28

CVがぶるわあああああああああああああの人ではさすがに自分の腹筋が厳しかったのでソリンさんの口調を大幅に改善することにしました

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